思い通り

私は妻とたびたび「子の習い事」について話す事があります。私は「武道を習わせ心技体を磨き、たくましい子に育ってほしい」と話す一方で、妻は「スポーツとピアノを学び、文武両道に励んでほしい」と子の将来に夢を見ては会話を弾ませています。しかし、この会話の中には何よりも大切な事が入っていません。それは子の意思です。この話はあくまでも願望を話しているだけで、この通りにしようという思いはありません。しかし、この思いに熱意が込められ、本気でその様にさせようとなった場合、子の意思が尊重されていないままの「親の思い通り」の状態となります。

不登校・ひきこもり当事者家族の会「みつばちの会」では、「子育てが上手くいかない」「子から反発がある」といった相談の際によく出てくるのが、この「思い通り」というキーワードなのです。親の思い通りに子育てしようとした時に反発があると、親は「なぜ言う事を聞かないんだ」と悩んでしまう事になります。

コーディネーターをしていただいている長阿彌先生からは「我が子であっても自分自身ではない。子を思っての発言について、子が望んでいるかどうかはまた別の問題。子の思いを聞いた上で一緒に考えていく必要がある。その際に、子を親の思い通りにする事は難しいため「子は思い通りにはならないもの」という前提で関わる事で冷静に話す事が出来るし、子と正確な距離感を取る事が出来る」とお話されます。

子育てをする中で親の思いが入るのは当然の事ですが、子の思いを尊重し、その意思に寄り添いながら考えていく事が何よりも大切なのかもしれません。